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#01 擬人化の表現

擬人とは?

擬人化と聞いて何を思い浮かべますか?日本のアニメやゲームに興味があれば、「艦隊これくしょん-艦これ-」「刀剣乱舞」を思い出す人もいるでしょう。『ヘタリア Axis Powers』や『はたらく細胞』といったマンガ作品もあります。2020年代の日本ではすっかり定着している“擬人化”は、日常生活のどんなところにも見つけられます。この表現について、日本のサブカルチャー、ポップカルチャーの中での影響や、日本と西洋、東洋文化での表現の違いそして共通することなどを、何回かに分けて見つけていきたいと思います。

まず、擬人という表現方法は、洋の東西を問わず古来より使われてきた修辞法の一つです。大まかにいうと、抽象的な概念やモノなど人間ではないものを、人間の特徴に当てはめて表したり想像させたりすることですが、人間が抽象的な観念を具現化するような表現も含まれます。つまり置き換えて表現すること、比喩、暗喩に分類されるということですね。ただここでは、ハッキリとした定義づけやここまでが擬人化でここからが変身・化身、ここからはキャラクターといった線引きは、ひとまず保留しましょう。人間が長い時間の中で育んできた文化や多くの表現の影響そして交流が、現代の『びんちょうタン』『BEASTERS』などのマンガ作品や、「ウマ娘プリティーダービー」「tact op.」などのゲームタイトル、さらには様々な分野に広がるゆるキャラなどにつながっていると考えれば、定義づけや線引きは容易ではないと想像できるでしょう。

人間ではないものに人間の特徴を当てはめて表現すること、置き換えの表現に着目してみましょう。前掲の『BEASTERS』のように私たちは人間と動物に置き換え入れ換えて、日常生活や社会で起こる出来事を面白おかしく時に残酷に物語ってきました。世界中で、神話、説話、寓話あるいは民話など、いわゆる昔話としても親しまれています。例えばイソップ物語のアリとキリギリスの話、グリム童話のブレーメンの音楽隊、アンデルセンのみにくいアヒルの子は、多くの人が知っているお話でしょう。日本では古事記のいなばの白うさぎや、昔話のカチカチ山といったお話が語り継がれています。こうした物語が絵画や彫刻、あるいは音楽でも表されるようになり、技術の発達とともに表現媒体も大きく展開、その表現も様々に分岐し発散していきます。1902年に出版されたビアトリクス・ポター『ピーターラビットのおはなし』は120年経ったいまでも人気の作品ですし、世界の人々に愛される人間のように動き回る動物のキャラクター、ミッキーマウスやバッグス・バニーも20世紀のアニメーションという表現方法が、その魅力を最大限に引き出しています。

ここまで大まかですが擬人という表現方法の定義を確認し、今回は人間と動物を置き換えて物語るという表現を例に概観しました。次回は美術の分野から擬人の表現をピックアップしていきます。擬人化は美術の分野ではアレゴリー(寓意)という表現の手段として捉えられ、アレゴリーは美学や美術史などのアカデミックな分野でも重要な研究テーマです。美術、芸術作品の中で擬人表現を用いた作品にはどのような作品があるか探してみましょう。

written by Undo

作品情報:

「艦隊これくしょん-艦これ-」https://www.dmm.com/netgame/feature/kancolle.html

「刀剣乱舞」https://www.dmm.com/netgame/feature/tohken.html

「ウマ娘プリティーダービー」https://umamusume.jp/

「tact op.」https://takt-op.jp/ ※ゲーム「takt op. 運命は真紅き旋律の街を」(2022年現在未発売)アニメ「takt op.Destiny」(2021年)

『ヘタリア Axis Powers』日丸屋秀和‎ 幻冬舎コミックス 2008年 

https://www.gentosha-comics.net/book/b521003.html

『はたらく細胞』清水茜‎ 講談社 2015年 

https://shonen-sirius.com/series/sirius/saibou/

『びんちょうタン』江草天仁 マッグガーデン 2006年 

https://www.mag-garden.co.jp/comics/5815/

『BEASTERS』板垣巴留 秋田書店 2016年 

https://www.akitashoten.co.jp/works/beastars/

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