REVIEW

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『キラキラとギラギラ』

セカイ系のような重大事件はなく(いまのところは)、スポーツマンガ、バトルマンガでもなく、グルメマンがではない。BLや百合系の要素もない、いたってありふれた学園恋愛モノ、『キラキラとギラギラ』。この作品が注目を集める一番の理由は、マンガを構成要素である絵の表現。“画風違いラブコメ”が『キラキラとギラギラ』の驚愕ポイントなのだ。

主人公の姫路ルルは、転校した高校で幼なじみの極楽寺禅に10年ぶりに再会する。ルルが転校したのは獄門高校。ルルは転校初日、衝撃的な“違和感”に見舞われる。それがこの作品のチャレンジングな表現の“画風違い”。ルルはタイトルの“キラキラ”を表す少女マンガ風の作画だが、禅をはじめとする獄門高校の面々は“ギラギラ”ないわゆる劇画風に仕上がっているのだ。ルルの造形は1970年代、80年代の少女マンガ風(あくまで“風”だ)。顔の半分を占めるようなキラキラした瞳と長いまつ毛、リボンで結ばれボリュームたっぷりのツインテール。制服は大きなスクールリボンにパフスリーブ、短めのスカート、そして学生カバン(80年代90年代のTV学園ドラマでしかもう見ることができないのでは?)。そして全体的に細めの描線で描かれている。一方、禅をはじめとする獄門高校の生徒たちや教師は、1980年代のヒット作品『北斗の拳』(武論尊、原哲夫)『魁!男塾』(宮下あきら)を彷彿とさせる造形なのだ。不穏なイメージが高校名からも分かるように、80年代の“荒れる学校”や“不良”と呼ばれた学生たちの言動やファッションが、黒いベタ塗り中心の太い輪郭線や細かな描線の陰影といった筆致で描かれている。そもそも画風によってキャラクターの等身、コマ割りやオノマトペなど効果音も違ってくると思うのだが、『キラキラとギラギラ』は、それらを違和感ありで成立させて、その違和感を楽しむ作品なのだ。

単行本1巻までのストーリーは、マンガで描かれる画風違いを違和感としてルルに体験させ、セリフや小道具として登場する画風の元ネタである1970年代、80年代(90年代~00年代と思われるものもあるが)の昭和カルチャーの解説をさせて進行している。そして獄門高校=異世界と認識している禅は、この“劇画風”からルルを守りたいと思っていることが分かり、ルルと禅の画風違いラブコメがこの後もどのようにすれ違いながら進展してくのか。続きがとても楽しみだ。嵐田佐和子の本来の画風を確認するには、最後の敵を倒したのに変身が解除されないヒーローの物語『鋼鉄奇士シュヴァリオン』、弓道部のない高校に入ってしまった主人公の弓道への熱い思いを描いた『青武高校あおぞら弓道部』をどうぞ。

written by Undo

作家嵐田佐和子
作品情報『キラキラとギラギラ』(KADOKAWA ハルタ2022年~連載中 単行本1巻刊行中)
https://www.harta.jp/lineup/
https://comic-walker.com/contents/detail/KDCW_EB06203585010000_68/

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