Manga Review #23
『シャングリラ・フロンティア~クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす~』
通信環境の向上とスマホの登場で、ゲームの世界はさらにたくさんの人を引き込んで大きく拡張している。ゲームはテクノロジーがどれほど発達してツールが変化しても、モンスターや敵をいくら倒しても、字義通り遊び(プレイ)が本質だろう。そうしたゲームの世界を舞台にしたのが『シャングリラ・フロンティア~クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす~』(長いので以下“シャンフロ”)。少し未来なのか異世界なのかは分からないが、フルダイブ型が通常のゲームのスペックになっている世界で、“クソゲー”(理不尽なバグが横行し、操作性もゲームのストーリーも低品質なゲーム)をクリアすることを愛するクソゲーハンターの高校生・陽務楽郎(ひづとめらくろう プレイヤーネーム「サンラク」)が、総プレイヤー数3000万人という“神ゲー”のシャングリラ・フロンティアに挑戦するというストーリー。
少しこの作品自体の背景を整理しておくと、『シャンフロ』は最も有名なWeb小説投稿サイト“小説家になろう”の掲載作品が原作である。多くの場合、投稿サイトで人気が出ると出版社がついて書籍として出版、そこからコミカライズやアニメ化といったルートを通るのだが、『シャンフロ』は書籍ではなくコミカライズが先行しためずらしい作品だ。そして『シャンフロ』の舞台となるフルダイブ型のゲーム。Web小説のジャンルにVRMMO(Virtual Reality Massively Multiplayer Online Game)モノがある。五感で没入するタイプのゲームの世界に、登場人物たちがトリップする(時には転生、転送される)ストーリー展開で、SFというよりは異世界ファンタジーと重なる設定が多いのが特徴だ。『ソードアート・オンライン』や『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』『とあるおっさんのVRMMO活動記』など書籍、コミック、アニメ、ゲームさらには舞台化までされるようなヒット作品がある。
マンガの『シャンフロ』は、クソゲーハンターであるサンラクが神ゲーのシャンフロ(たまに別のゲーム)に挑戦するストーリーだが、よほど潔いほどサンラクの現実世界での生活や人間関係はキャラ設定の補強程度(今のところ)にしか描かれない。シャンフロの世界で超難敵のユニーク・モンスターやイベントを、他のプレイヤーやNPC(Non Player Character)といかに攻略・達成するかをテンポよく描く方が中心だ。ゲームとしてのシャンフロは開発側にも謎や伏線がちりばめられていて、高度な文明が滅んで数千年後の世界というシャンフロの壮大なストーリーはまだまだ進行途上だ。『シャンフロ』はゲーム、ゲーマーたちの話で、異世界ジャンルで定番のチート設定はなく、ただひたすら己のプレイヤースキルを頼みにイベントに挑み、自分のレベルを上げ、新たな武器や能力を獲得していくのが清々しい。プロのゲーマーもいるクソゲー仲間から一目置かれているサンラクのプレイヤースキル、数多のクソゲーを制してきた(ゲーム内での)身体能力やゲーム感、そして何よりゲームを楽しむという態度。どんなに難敵であっても、どんなに無謀な挑戦であっても、サンラクが常に立ち返るのは、ゲームを楽しむというところ。ゲームは遊びなのである。マンガでゲーム世界を存分に楽しめる作品だ。
作家 | 原作/硬梨菜 漫画/不二涼介 |
作品情報 | 『シャングリラ・フロンティア~クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす~』(講談社 週刊少年マガジン連載 KCデラックス 15巻刊行中) https://anime.shangrilafrontier.com/ 小説家になろう https://ncode.syosetu.com/n6169dz/ 設定鍵インベントリア:シャンフロの諸々 https://ncode.syosetu.com/n6458eg/ |
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